terminal

stories

dialogue

talk about BRAND DESIGN 01

ブランドをデザインする。表面的な見た目の変化だけでは、決して完成しない営み。 その本質を探るべく、TRICLE.LLC(トリクル合同会社)のリブランディングを事例に、同社代表の上柿 琢さんを迎え、ターミナル代表の中田と経営者ふたりで対談しました。 編集力を武器に、広告企画・制作事業の他、自社ブランドの開発も手がけてきた上柿さん。しかし、いざ自分たちの会社のリブランディングとなると、「行き詰まりを感じていた」という。 デザインのオーダーを受けたターミナルは、どのようにトリクルの進む先を見すえ、形を与えていったのか。ふたりの経験が物語る、ブランドデザインの可能性とは。

ブランドデザインはどこから来て、どこへ行くのか。
上柿 琢さん×中田嘉生 -前編-

出会いは10年前、6畳ワンルームで

中田:
最初の出会いは、10年くらい前ですよね。ちょうどその時期、上柿さんがトリクルを設立して、僕も独立したばかりで。

上柿:
新しいプロジェクトに参加する座組を考えていたときで、当時メディア制作界隈で話題になっていた「イケてるデザイナーさんがいる!」と紹介してもらったのがきっかけでした。

中田:
前の会社でデザイナーだった頃、旅行誌を手がけていたときに繋がりができて。ありがたいです。

上柿:
アートディレクターとしては駆け出しだったと思うのですが、当時から中田さんは引く手数多。「まずはお会いしたいです!」とオフィスに伺ったんですよね。

中田:
その頃はまだマンションの一室、6畳ワンルームの事務所で膝をつきあわせて(笑)。やっぱり会社を始めたばかりで右も左もわからなかったから、同じ年代で、同じような志向性の人がいたのは嬉しかったな。

上柿:
たまたま練馬出身同士ですしね!その後、トリクルにデザインの力が必要な案件が増え始めたタイミングで、メンバーにも紹介。ターミナルさんに仕事を依頼する機会が増えていきました。

内に閉ざすのではなく、外を向く

中田:
2022年には、トリクルさんのリブランディングに携わらせていただきました。一緒につくる、という意味では同年夏から原宿のオフィスを共にしたことがきっかけのひとつになっていると思います。

上柿:
中田さんは、会社に社長ひとりだった頃から社員が増えてもずっと、オフィスをシェアするスタイルですよね。

中田:
自社だけの仕事場で、考え方やコミュニケーションが閉鎖的になってしまうのを避けたくて。

上柿:
リブランディングの起点を考えると、僕はもう少しさかのぼって2020年、緊急事態宣言が初めて出たとき。予定していた案件がなくなったり、他のメンバーは在宅ワークだったりで寂しい。お互い暇だし、ちょっと話そうよと。

中田:
暇で誰もいないと、不安になるから(笑)。

上柿:
ブレストして、新規事業を考えてみたり、世の中にこんなものがあったらいいよねというプランを出してみたり。コロナ禍という内向きになりがちな時期でも、外を見ながら仕事ができる感覚があった。だからこそ、共同オフィスも実現できたし、次の10年はこういう人と一緒に仕事をしていきたいと思い直すようになりました。

ブランドは人格。″芯のある人″をつくる

中田:
リブランディングは、10周年のタイミングでもありましたね。

上柿:
次の10年を迎えるにあたり、社内と社外を一気通貫するようなビジョンをまとめなくては、という時期。でも、クライアントワークが優先になり、自社のことは後回しにしがち。ホームページも何年も前から手を入れてなくて、どうしようかと思っていたら、中田さんが「ちょっと古いよね。もう俺がデザインするから!」って逆に申し出てくれたという(笑)。

中田:
僕は企業のブランドデザインを考えるときに、人格として捉えることが多いのですが、トリクルさんって、「その場その場ではすごい力を発揮するんだけど、何を考えているかはわからない人」というイメージがあったんです。わりと近くで見させてもらっていた自分でもそうなら、世の中から見たらもっと伝わっていないかもしれない。もったいないなと。

上柿:
身に覚えがありすぎます。

中田:
あらためて、あの頃に経営者として感じていた課題って何ですか?

上柿:
設立7年目くらいから経営目標が「多角化」になり、メディアの受託事業だけでなく、企業のクリエイティブやプロモーションを担うアカウント事業、自社の新規事業であるメディア運営やプロダクト開発など、様々な分野に取り組んでいました。
ただ、多角化する一方で、どこにリソースを割いて営業していくべきか自分たちでも見えず、ひとつひとつが根づいて広がってはいかない。みんなやるべきことをやっているはずなのに、「なんでなんだ?」とモヤモヤしていた気がします。

中田:
おそらく、社員の人数が増えて組織が拡大していたことも影響していましたよね。

上柿:
根本をたどると、自分たちが何者なのか、何を軸とするのかが曖昧だったからだろうなと。

中田:
僕自身、トリクルさんの「多角化と拡大」の真ん中に串刺しできる何かを見出だしたいなと思いました。

上柿:
この10年は、自分たちのことを世の中に発信していなくても、「過去の貯金」で声をかけていただいていたんです。光栄なことですが、この先は、培ってきたことをアウトプットして、次のフェーズにいかなくてはと。本気で考えるきっかけをもらえてありがたかったです。

後編では、コンセプトを言語化し、ブランドをカタチにしていく過程について語ります。

→後編に続く。